2015年11月6日金曜日

天魚の由来 《本編》

「天魚」の号は
荘子の最初の章、
「逍遙游第一」にある、
巨魚が巨鳥に化して
南の果てを目指す物語からとった。

その話はこんな感じ

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世界の北の果て、
(くら)い、冥い海、北冥に
巨大な魚がいる。
その名は鯤(こん)という。

鯤の大きいことといったら、
いったい何千里あるのか、
見当もつかない。

この鯤は
時を得て変身して巨鳥と化する。
その名は鵬(ほう)という。

鵬の大きいことといったら、
その背中がいったい何千里あるのか
見当もつかない。

この鵬が一躍、
天翔け昇るや
広げた翼の巨大なること、
天から垂れこめる雲のよう。

この鳥は
海の巨大なうねりに乗じて飛翔し、
南の果ての海、南冥を目指す。

南冥とは天上の池である。

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天地造化の妙は
想像もつかないような巨魚を
この世の果てに在らしめ
それを当然の如く巨鳥に変ぜしめ
飛び立たせてしまう。

そんな巨魚がいるのか
どこにいるのか
どうすればそれが鳥に変ずるのか
過去なのか、未来なのか、いつなのか、
なぜ南を目指すのか、
どうしてそれといえるのか。

そんなことは誰にも分からないし
分かるはずもない。
そうだからそうなのであって
それが造化の妙というものだから。

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そんなこんな話があって、
天翔(あまがけ)る馬が天馬なら
天翔る魚は天魚であろう、
ということで
「天魚」と号した。

…さっぱり、わからない。
だろうと思う。


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北冥有魚。
其名為鯤。
鯤之大。
不知其幾千里也。
北冥に魚あり。
其の名を鯤と為す。
鯤の大なる。
其れ幾千里なるかを知らず。
化而為鳥。
其名為鵬。
鵬之背。
不知其幾千里也。
化して鳥と為る。
其の名を鵬と為す。
鵬の背(そびら)や、
其れ幾千里なるかを知らず。
怒而飛。
其翼若垂天之雲。
怒して飛ぶ。
其の翼や垂天の雲の若し。
是鳥也。
海運。
則將徙於南冥。
是の鳥や、
海の運(めぐ)るとき、
則ち将に南冥に徙(うつ)らんとす。
南冥者。天池也。 南冥とは天池なり。

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