2016年8月9日火曜日

黄葉に苦しむもの。苦土石灰を撒け。 されば再び緑なるを得ん 。

出勤の道の途中にある、とあるお宅のゴーヤは
小さな庭いっぱいの棚に
競うように蔓が伸び
まことに見事である。
よくできているなぁと感心していたが
ここ2週間、葉っぱがどんどん黄ばんできている。
そしてがどんどん広がっている。


苦瓜(ゴーヤ)を作り出した最初のころはそうだった。
元気にどんどん育っているのにある時から急に葉っぱが黄色くなる。
枯れる季節でもなし、
病気かと思って調べてみてもそのようでもないし
実際蔓はどんどん伸び、実もそこそこ採れていた。
なんだろう?


何年かしてわかった答えは
 「マグネシウム不足」
であった。



葉っぱの緑はクロロフィル(葉緑素)の色である。
ポルフィリンの1つであるクロロフィルは
ポルフィン環の真ん中に
1つのマグネシウムイオンを抱き込んで緑色になる。

たとえば同じくポルフィリンの1つであるヘムは
鉄イオンを抱き込んで赤いヘム鉄になる。
いうまでもなくヘム鉄は赤血球の赤の素で
体中に酸素を運ぶ立役者である。
ヘムのポルフィン環が壊れて開裂すると黄色いビルビリンになる。
おしっこが黄色いのは血液の残骸のビリビリンの色である。

葉っぱも血液も金属が色を作る。
花火も絵具(顔料)も同じことである。




マグネシウムを抱いて色を持ったクロロフィルは
太陽の光エネルギーを吸収し
電子伝達系の作用によって化学エネルギーに変換し
植物体の材料を作り出す(光合成)。
光合成をするためにはクロロフィルが必要だし
マグネシウムなしではクロロフィルはクロロフィルにならない。

苦瓜の生長は旺盛で
エネルギー工場である「葉っぱ」をジャンジャン広げる。
エネルギーを作るマシーンはクロロフィルである。
クロロフィルはマグネシウムがなくては働かない。
新しい緑の葉っぱを作るため、
苦瓜は土の中からどんどんマグネシウムを吸収する。
それでも足りなければ
古い葉っぱからマグネシウムを強制的に接収する。
そして古い葉っぱは黄色くなる。
古い葉っぱで足りなければ、新しい葉っぱからもマグネシウムを引っ剥がす。
結果、
若葉を除く植物体全体が黄色くなってしまう。


…そこまで分かれば対策は容易である。
マグネシウムを補えばよい。
具体的には苦土石灰(酸化マグネシウムと炭酸カルシウムの混合物。苦土はマグネシウムのこと)を与えてやればよいのである。
苦土石灰は百均でさえ買うことができる。



わかっていて気をつけていても
やりすぎるわけにはいかないと思うと
やはり苦瓜の葉っぱ(胡瓜も)には黄色いスポットが出てくる。
でも兆候が見えて来たらちょっと苦土石灰を撒く。
それで黄化は収まる。
その効果は絶大である以上に
理屈通りに植物体が正直に反応することが
僕にとってはなんとも不思議かつ爽快な
毎夏の科学実験である。

件のお宅のゴーヤはますます成長旺盛である。
そして葉っぱは真っ黄っ黄である。
かつて同じ病に苦しんだものとして
その霊妙の処方箋を伝えるべき天命を思う。

明日あたり
匿名で手紙を入れてみようかしらん、
神の啓示のごとく。

「汝栽培者、
 黄葉に苦しむもの。
 苦土石灰を撒け。
 さればゴーヤは
 再び緑なるを得ん。」



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気を付けているつもりのウチの苦瓜も
葉っぱが古くなると黄色くなりだす。
これは他の葉の陰であった葉なので
特に黄色い。















クロロフィルは
ピロール環4つからなるポルフィン環の真ん中に
マグネシウムを抱く。
ヘムと違うのは
フィトールというアルコールの
長い尻尾を持つこと。



赤血球のヘモグロビンに含まれるヘム鉄も
基本構造はクロロフィル(葉緑素)と同じ。






葉っぱを計ったら
葉柄を入れないで
長さ21㎝あった、

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