2016年11月12日土曜日

海東諸国紀

小難しそうで
読みそうにないけど100円なら
と買ってみたが
面白くてすぐに読み終えた。

厚く見えるが
影印(原本の各ページの写真)が3割
注釈が2割、 
空白がたくさんで
本文は厚みの3割もないくらいでは?
ただ、
漢文読み下しなので
慣れない人にはとっつきにくい。

1471年、
応仁の大乱真っ只中に書かれた
朝鮮王朝官僚による日本の紹介本。
内容は日本の
歴史、地理、人物、民俗、外交、儀礼に及ぶ。

突っ込みどころはたくさんあったけど
そのいくつかをあげてみた。

(突っ込みどころ、といっても、
 その記述は過誤はあるにせよきわめて誠実であり、
 著者に罪のないことは
 彼の名誉のために申し添えておきたい)



「日本国王の姓は『源(みなもと)』である」
天皇家に姓はないだろ!
というは知ったかぶりの早とちりで
ここでいう日本国王は日王(現代韓国における天皇への卑称)ではなく
室町幕府の足利将軍である。

歴代の足利将軍の多くが
金目当てで中国に臣従を申し入れ
大明皇帝から日本国王に任命されている。
僕らは「征夷大将軍」だと思っているから
「日本国王」と言われるとぽかんとしてしまうが、
同じく明に朝貢している朝鮮から見れば
日本国王でまちがいない。

足利将軍家も徳川将軍家も「姓」は「源」なので
国内であれ対中国であれ、公式の場では
足利義満 でなく「みなもとのよしみつ」
であったり
徳川家康 でなく「みなもとのいえやす」
である。

国王がいるならその上の天皇はどうなるんだ?
という疑問もあるが
この本では神武天皇以来の歴代天皇を詳述しつつも
そこのところは触れていない。
大人である。

「李氏朝鮮たかられる」

日本からの来客の記録が延々と書いてある。
その多くはハイエナである。

朝鮮に世祖という偉大な王様が即位した。
天もこれを嘉(よみ)して
いろいろな奇跡が起こる。
花が降ってきたり
甘露が天から降りたり
菩薩が現れたり…

国内で喜び合っておけばそれでよかったところを
ご丁寧に使者を立てて日本に報告したのが運の尽き。
乱世日本のハイエナたちにいいように食い物にされてしまう。

日本からの「慶賀のお客」がじゃんじゃんくる。
お祝いはただの口実。
おみゃげ狙いの下心の塊である。

しかも、み~んな
朝鮮外交の正規の窓口である、
対馬島主、宗貞国の紹介状をもって来る。
朝鮮政府は彼らを追い返すこともならず、
お土産付きで接待し続けるのである。

紹介状を書く貞国もまた下心の塊である。
儲かっただろう。

使者をつかわすのは自称「有力者」だが
肩書のインチキくさいこと甚だしい。
「海賊大将」なんて肩書でやってくるのが幾人もいる。
それって倭寇?
村上水軍からもお祝いが来ている。
倭寇を平らげて立国した李氏朝鮮としては複雑だろう。

5年ばかりの間に80組以上のお祝いが来ている。
毎月1組以上である。
見栄の代償。
手痛い出費である。

この
「見栄っぱりをやめられない」
という弱み(?)に付け込んで贈り物をむしり取る商売は
対馬藩の伝統芸として
こののち江戸時代にいたってなお続けられるのである。

「装飾過剰」

輸忠協策靖難同徳佐翼保社炳幾定難翊戴
純誠明亮経済弘化佐理功臣
大匡輔国崇禄太夫
議政府領議政
兼領経筵藝文館春秋館弘文館
観象監事礼曹判書高霊府院君

これで本書の著者、申叔舟さん、
一人分の肩書である。

メインの肩書は
「議政府領議政」あたりだが
散官名、功臣号…と
名誉の装飾ごまんとついている。

実は中国朝鮮の高級官僚はみんなこんな感じなのであるが
「前の副将軍中納言水戸光圀公にあらせられるぞ!」
で十分長いと思う僕たちからすると
想像を絶する長さである。
(とはいえ、副将軍中納言水戸光圀公、という呼び方にも3つ4つの突っ込みどころがある)




…面白がって書いていたけど
なんだろう、
これを読んだ人が面白がる気がちっともしない。

とりあえず今日はここまでにしておいてやるか。

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